ANAの遅延補償は“現金かマイル”を選べる。私がマイルを選んだ理由
ANA便の遅延で届いた補償のご案内メール。現金・マイル・ANA SKY コイン・電子マネーから受け取り方法を選べる仕組みと、申請の流れ、千円単位への切り上げルール、1マイルの実質的な価値、選ぶときの注意点まで。実体験から紹介します。

飛行機が遅れる。旅慣れた人でも、あの待ち時間の落ち着かなさには慣れないものです。搭乗口の椅子に座って掲示板を眺めていると、スマートフォンに一通のメールが届きました。差出人はANA。補償に関するご案内、と書かれています。
開いてみて、少し意外に思いました。補償を「現金」で受け取るか、「マイル」で受け取るか、選べるというのです。同じ金額なら、どちらを選んでも同じ——最初はそう思っていました。けれど調べてみると、そうではありませんでした。今回は、ANAの遅延補償で受け取り方法を選ぶときの考え方を、実際に手続きをした流れとあわせてお伝えします。
搭乗口で待っている間に、届いた一通のメール
メールが届いたのは、遅延が確定してからそれほど時間が経たないうちでした。本文にはWEBフォームへのリンクが貼られていて、そこから補償の申請ができるようになっています。空港のベンチに座ったまま、スマホだけで手続きを始められる仕組みです。

ひとつ知っておきたいのが、この案内は基本的に「一人ずつ」届くということ。予約のときに同行者それぞれの連絡先を登録していれば、その人の連絡先に個別に案内が来ます。逆に、代表者の連絡先しか登録していないと、同行者の分の案内が届かないこともあるようです。家族や友人と一緒に予約するときは、少し気に留めておきたいところでした。
補償の対象になるのは、“ANA側の事情”による遅延
ここは誤解しやすいポイントです。遅延さえすれば必ず補償が出る、というわけではありません。ANAが案内しているのは、機材故障など自社に起因する事由によって30分以上の遅延や欠航が発生し、到着した空港から目的地まで定期公共交通機関が使えない場合、あるいは翌日への振り替えで宿泊が必要になった場合などに、宿泊費や交通費を定められた範囲で負担する、という内容です。
一方で、悪天候や空港の混雑といった「不測の事態」による遅延は、原則として補償の対象外とされています。台風や大雪で足止めされたときに補償が出ないのは、こうした線引きがあるためです。もっとも、天候による他便の遅れが巡り巡って機材繰りに影響した場合など、判断が微妙なケースもあります。案内メールが届いたなら、まずは申請してみるのが早道でした。
なお、実際に立て替えた交通費や宿泊費とは別に、一律の「お詫び金」が案内されることもあります。こちらは領収書がなくても、申請すれば受け取れる扱いになっているようでした。
選べる受け取り方法は、ひとつではなかった
フォームを進めていくと、受け取り方法を選ぶ画面が現れます。用意されていたのは、銀行振込による現金、ANAのマイル、ANA SKY コイン、そして電子マネー。金額は同じでも、受け取る形は四つから選べるのです。

たとえば案内された金額が5,000円なら、5,000円の振込か、5,000マイルか、5,000コインか、5,000円分の電子マネーか。数字だけ見れば横並びに思えます。ここで多くの人が、なんとなく現金を選ぶのではないでしょうか。私も最初はそのつもりでした。
けれど、この四つは同じ価値ではありません。特にマイルは、いくつかの理由で「額面より大きくなる」可能性を持っています。
千円単位への“切り上げ”という、小さな逆転
マイルを選ぶうえで見逃せないのが、切り上げのルールです。マイルで受け取る場合、金額が千円単位に切り上げられて付与される扱いになっている、という報告が複数見られます。
たとえば請求額が9,100円だったとします。現金なら9,100円がそのまま振り込まれます。ところがマイルを選ぶと、10,000マイル。900マイル分が上乗せされる計算です。金額の端数が大きいほど、この差は効いてきます。
1マイルを1円と考えたとしても、この時点で現金より有利になる場合がある。まずここが、最初の分かれ目でした。もちろん、端数がほとんど出ない金額であれば、この恩恵は小さくなります。自分の案内された金額を見て、切り上げがどれくらい効くかを確認してみるといいと思います。
1マイルは、1円ではない
そして、マイルを選ぶ最大の理由がこちらです。マイルの価値は、使い方によって変わります。ANA SKY コインに交換して1コイン1円として使えば、おおむね1マイル1円前後。けれど、特典航空券に交換した場合には、1マイルあたり2円以上の価値になるケースも多いと言われています。

路線や時期によって必要マイル数は変わるので一概には言えませんが、たとえば10,000マイルを国内線の特典航空券に使ったとき、同じ区間を現金で買えば2万円を超えることは珍しくありません。つまり、1万円の現金を受け取るか、2万円分の移動を手に入れるか——そういう選択になり得るということです。
マイルは“貯めるもの”という印象が強いのですが、本質は“使い方で価値が変わるもの”。この視点を持つと、受け取り方法の画面の見え方が変わってきます。
マイルが向いているのは、こんな人
とはいえ、誰にとってもマイルが正解というわけではありません。マイルを選んで得をしやすいのは、いくつかの条件に当てはまる人です。
まず、普段からANAに乗る機会がある人。すでにマイルを貯めていて、あと少しで特典航空券に届く、という状況なら、補償分のマイルが最後のひと押しになります。次に、3年以内に旅行の予定がある人。マイルには有効期限があるため、使う当てがあるかどうかは大きな判断材料になります。
そして、少額の現金より“次の旅”に価値を感じる人。5,000円が振り込まれてもいつのまにか生活費に紛れてしまいますが、5,000マイルは口座に残り続け、次の旅の原資になります。使い道が旅に限定されるからこそ、旅に消えていく。私がマイルを選んだいちばんの理由は、実はここでした。
現金を選んだほうがいい場面もある
公平に、逆の視点も書いておきます。現金を選ぶべき場面は、確かにあります。
いちばん分かりやすいのは、実際に立て替えた出費が大きい場合です。急な宿泊やタクシーで数万円を支払っていたなら、それは家計から出ていったお金。マイルで返ってきても、その穴は埋まりません。素直に銀行振込を選ぶのが自然です。
もうひとつが、ANAにほとんど乗らない人。マイルの有効期限は、積算された月から36か月後の月末まで、つまり3年です。3年のあいだに使う見込みがなければ、そのまま失効してしまいます。額面どおり受け取れる現金のほうが、確実に価値を守れます。年に一度も飛行機に乗らないという方なら、迷わず現金でいいと思います。
迷ったときの、もうひとつの答えANA SKY コイン
マイルか現金か。その中間にあるのが、ANA SKY コインという選択肢です。これはANAのウェブサイトで航空券や旅行商品の支払いに使える電子クーポンで、1コインが1円として使えます。
マイルとの大きな違いは、特典航空券の空席枠を待つ必要がないこと。通常の空席さえあれば、普通の航空券として購入できます。しかもコインで買った航空券は有償扱いになるため、フライトマイルも貯まります。「特典航空券が取れずに結局使えなかった」という失敗を避けたい人には、現実的な選択肢です。
ただし、有効期限は交換した月から12か月後の末日まで。マイルの3年に比べると、かなり短くなります。1年以内に確実にANAを使う予定があるならコイン、もう少し先を見据えるならマイル。そんな使い分けが自然でした。
受け取り方法は、“どう使うか”まで考えて選ぶ
申請そのものは、フォームに沿って進めれば10分ほどで終わります。交通費や宿泊費を請求する場合は領収書が必要になるので、遅延に巻き込まれた時点で、タクシーや宿の領収書はきちんと確保しておくと安心です。申請には期限が設けられていることもあるため、案内メールが届いたら早めに手続きを済ませておきましょう。
なお、補償の対象範囲や受け取り方法、マイルの扱いといったルールは、見直されることがあります。実際に申請する際は、必ずANAの公式サイトと案内メールの記載で最新の条件を確認してください。この記事は、あくまで申請時点での流れの記録としてお読みいただければと思います。
遅延そのものは、正直なところ、できれば経験したくないものです。それでも、受け取り方法の画面で一呼吸置いて「これをどう使うか」まで考えてみると、失われた時間が少しだけ違う形で返ってくる感覚があります。もし同じ案内メールが届いたら、ぜひ現金以外の選択肢にも目を向けてみてください。






